キックボクシングでヤンキーと練習した話

格闘技のこと
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格闘技をやっていると、時折ジムにヤンキーのお兄さんが体験に来ることがあります。

見るからに喧嘩っ早そうな風貌で、ギラギラ感もあってなかなかのイカツさです。

とはいえジム内で暴れたりすることはなく、ちゃんとトレーナーの指示に従ってやってくれる素直な子達ばかりですが、対人練習となると生来の性なのかムキになってくるケースも。

今回は、そんな中で今でも時折思い出す、とあるヤンキー君とのエピソードをお話したいと思います。

※先に言っておきますが、喧嘩をしたとか成敗したとかいう類いの話ではありません(笑)

ヤンキー(以下S君)との出会い

S君と出会ったのは、かれこれ5年ほど前だったと思います。

体格は僕よりやや細く、決して大柄という感じてはありませんでした。

しかし、両腕にはビッシリと刺青が入っており、目付きも鋭くいかにもイケイケなタイプ。

そんな見た目ではあったものの、ジム内での普段の物腰は柔らかく、ノリの良い彼は他のジム生とすぐに溶け込んでいきました。

キックボクシングジムに入会した理由はしっかりと聞いていませんが、「試合には出てみたい」という話をした記憶があります。

毎回ヒヤヒヤしたマススパーリング

S君は当時20代前半で、仕事は工事現場の作業員。

そのおかげなのか身体が強く、特にパンチ力はかなりのものでした。

練習を始めて割とすぐにマススパーリングに参加するようになり、僕も何度も闘いました。

S君はちゃんと加減ができるタイプの子でしたが、自分より上手いと認識した人にはガンガンとそれなりの力を入れて攻撃を仕掛けてきます。

僕はキャリアがそれなりに長いこともあって、まだ始めたばかりのS君の攻撃は割かし捌けていたためか、ブンブンと振り回してくる場面も多くヒヤヒヤものです。

「クソ、当たらねぇ…!」と言いながら攻めてきていましたが、こちらは喰らったらマズい威力のパンチを避けるのに必死で、正直やめてほしかったと今でも思っています(笑)

順当に成長していくS君

S君は練習に真面目に来ており、生来のセンスも手伝って上達の速度は目を見張るものがありました。

最初はパンチで前に出てくるばかりでしたが、キックも上手く使って距離を取れるようになり、ディフェンスもしっかりできるようになるなど、メキメキと成長。

数ヵ月後にはジムの代表から「そろそろ試合に出れそうだな」と言われるほどに。

その後少しして試合へ出場し、負けてしまったものの「これからもっと強くなるんだろうなぁ」と僕は思っていました。

突然来なくなったS君

しかしある日突然、S君はジムに顔を出さなくなりました。

最初は仕事が忙しいのかと思っていましたが、そのまま1ヶ月が過ぎても全く来ないまま。

時折あるケースなのですが、意気込んで臨んだ試合に負けると、それまで築いてきた自信とやる気がしぼんでそのまま辞めてしまう子がいます。

「S君もそうなってしまったのかも…」と、ここで辞めるのは勿体ないとは思いつつも、こればかりは本人の問題なので何ができるわけもなく。

そのままどんどん、季節は過ぎていきました。

充実した人生を歩み始めたS君

しかしその後しばらくして、S君はひょっこりとジムに来ました。

思わずワケを聞くと「付き合っていた女性が妊娠し、バタバタしていてたもののようやく落ち着いてきました!」とのこと。

そう、S君は結婚し一児のパパになっていたのです。

表情も心なしか以前よりグッと柔和になっており、落ち着いた雰囲気を纏っていました。

そこから以前よりペースはグッと落ちたものの、再び練習に来始めたS君。

結局少ししてジムは辞めてしまいましたが、出会った当初はあんなにギラギラしていた子が、こんな風に変われるんだなぁとしみじみしました。

終わりに

以上がヤンキーのS君とのエピソードです。

僕はヤンキーとは縁遠い、クラスで言うと地味で目立たないタイプの人間でした。

しかし格闘技をキッカケにヤンキーを始め色々な人と関わるようになり、自分がいかに先入観で相手の印象を決めつけていたのかを知りました。

「格闘技は人間成長の場でもある」と誰かが言っていましたが、こうして格闘技を通じて他人と関わり合っていると様々な価値観に触れられるので、それもあながち嘘ではないと思います。

最近はネット上でしかやり取りしないオンラインでの交流が多くなりましたが、それだけでは学べないこともあります。

格闘技に興味がある方は、ぜひ始めてみてそういったところも楽しんでもらえたら何よりです。

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