以前、ボクシングのプロライセンス取得を目指すと、宣言する記事を出しました。
あれからだいぶ時間が経ってしまいましたが、実は無事ライセンスを取得することに成功していました!
「ボクシングでプロライセンスを取得するのは簡単」という意見もありますが、筆者にとって取得までの道のりは決して簡単なものではなかったです。
そこでこの記事では、筆者がプロライセンス取得までに行った、必要なことを全て解説していきます。
これからボクシングのプロライセンス取得を目指す人の参考になれば幸いです。
ボクシングコミッションの加盟ジムへ入会
全てはここから始まります。
ボクシングのプロライセンスを取得するには、日本ボクシングコミッション(JBC)が主催するプロテストに合格することが必須です。
しかし、コミッションに加盟しているボクシングジムに所属していないと、プロテストを受験することができません。
そこで、まずは加盟ボクシングジムを探す必要があります。自宅の近く、あるいは職場の近くにないか探してみましょう。
この時に注意しなければならないのは、ロクに調べずに入会は絶対にしなこと。
ボクシングジムは昔ながらの気質のままのところも多く、未だに古い価値観を持った会長やトレーナーがいることがあります。
このようなジムに入会してしまうと、パワハラのようなしごきを受けたりして、挫折の原因となります。
事前に見学もしくは体験に申し込む、ネットで口コミを調べるなど、そのボクシングジムが健全で信じられるところか、しっかりリサーチしておきましょう。
取得に必要な練習日数
本人の才能やスポーツ経験などにもよるので一概には言えませんが、基本的には最低でも週5日の練習が必要です。
ジムによってはプロライセンス取得を目指すなら、『週○日以上』とか『月に○日以上』と練習頻度を条件の1つにしていることも。
筆者は仕事の都合で週4回の練習が限界でしたが、所属ジムの会長からは「もっと練習に来れるようにするのがプロだ」とことある毎に指摘され、肩身の狭い思いをしていました。
プロボクサーとは、試合となればお金をもらってやることになるわけなので、立派な仕事の1つです。
そんな存在になりたいのであれば、確かに週5~6日で練習するのが当たり前というのも分かりますよね。
取得までにかかる期間
これはジムの方針次第ですが、一般的には半年~1年ほどとなります。
最終的には所属ジムの責任者(主に会長)の判断となるので、始めてから3か月程度でも受験できますし、仮に3年やっても認められなければ受験できないままとなります。
この点はいかに信頼されているか、気に入られているかも関係してくるところなので、ボクシングの実力だけでなく人間力が問われる面もあります。
どれだけ才能や実力があっても、サボりがちだったりジムでの素行が悪ければ、「こいつはプロにさせない」と決められてしまうかもしれません。
そうならないためにも、練習はきっちり真面目に継続して取り組み、謙虚な姿勢で素直にトレーナーや会長の指導を受ける必要があります。
必要な道具
ボクシングのプロライセンス取得のためには、それなりの道具が必要となります。
また、安くていい加減な品質のものではなく、たとえ多少値が張ってもしっかりしたものを用意すべきです。
以下に筆者が実際に利用していた道具をご紹介していきます。
バンテージ・ナックルガード
プロボクサーであれば、必ず全員が巻いているのがバンテージです。
ボクシングで要となる、拳と手首を保護しする役割があります。
また、ナックルガードを装着することで、より拳の保護が強化されて思う存分にパンチを打ち出せます。
バンテージは各種メーカーが販売していますが、個人的に最も使い心地が良かったのは名門メーカーである『Winning』製のものでした。非伸縮タイプなので巻く時に引っ張りすぎて締め付けが強くなりすぎることがありませんし、長さがあるので拳手首もちゃんと守れるくらいに巻くことができます。
ナックルガードは、ゲルタイプとクッションタイプの2種類が存在しますが、おすすめなのはクッションタイプ。
ゲルタイプの方が直接的な保護機能は強いかもしれませんが、繰り返し使う中でゲルが潰れたり壊れてしまったりする可能性が高いので、長期的な視点で考えるとクッションタイプが良いと思います。
ボクシンググローブ(16オンス)
練習でミットやサンドバッグを打つのに、ボクシンググローブは欠かせません。
購入する際に1つ必ず守るべきなのが、重さが16オンスのグローブにすること。
プロライセンス取得のためにプロテストで使用するのは、16オンスのボクシンググローブです。
この重さに日ごろから慣れておかないと、本番でスタミナをみるみる奪われたり、ガードが下がりやすくなってしまう可能性があります。
ボクシンググローブも各種メーカーがこぞって販売していますが、個人的には『WINDY』製のものがベストです。
着脱が簡単で、グローブ内部の手入れもしやすく、簡単には壊れない強靭さを持っています。
ちなみに某メーカーの安価なボクシンググローブを買って使っていたところ、10回も経たないうちに手首の部分が破損してしまったため、ここでケチるのはあまりおすすめしません。
ヘッドギア
ボクシングのプロライセンスを取得するための練習には、スパーリングが外せません。
しかし、スパーリングはお互いが全力で打ち合うので、最もケガをするリスクの高い練習です。
そんなケガから身を守るためにも、ヘッドギアをいい加減なものにするのはやめましょう。
ヘッドギアには大きく分けて3種類ありますが、プロテストで使用されるのは以下のタイプのヘッドギアです。
したがって、これを購入して普段から利用しておけば、本番もヘッドギア装着の違和感を抱くことなく臨めます。
自分の身を守るためでもあり、装着した時にどれくらい視界が広くて動きやすくなるかを左右する道具なので、手入れはしっかり行いましょう。
ファールカップ
下腹部を守るためのファールカップですが、サイズ選びは要注意です。
筆者はあるファールカップを買ったものの、いざ装着してみると下腹部との間にアソビがありすぎる状態となり、つまりファールカップが自分の体型に大きすぎたのです。
結局ジムにあるファールカップを貸し出してもらい利用することとなりましたが、せっかく買ったのに1度しか使わずお蔵入りとなってしまい無駄になりました。
このような失敗をしないように、購入時は自分と道具のサイズをちゃんと調べておいてください。
マウスピース
相手のパンチから口腔内を守るために欠かせないマウスピース。
市販品で用意する人もいますが、プロライセンス取得を目指すのであれば、歯科医院でオーダーメイドで作ってもらうべきです。
もちろん市販品ではダメということではないのですが、自分の歯形に合わせて自力で作る必要があるので、上手くできないことが多いのです。
そのような状態でマウスピースを使うと、かえって口腔内を傷つけてしまう要因になることも。
そのためお金はかかりますが、歯科医院でプロである歯医者にしっかり作ってもらった方が、ケガも防げて安全です。
ボクシングシューズ
プロテストにおいてシューズの指定は特にないので、一般的なランニングシューズなどでも問題はありません。
しかし、ボクシングでプロライセンス取得のための本格的な練習をするのであれば、ボクシングシューズの方が軽くて動きやすいです。
ほぼ毎日長時間履いていると、どうしても臭いが染みついてきやすくなるので、使い終わったら必ず消臭スプレーをかけるなど、こまめなケアを心がけましょう。
最近はコインランドリーにシューズ専用の洗濯機があり、筆者はそれも定期的に利用していました。
自分が快適に練習するためにも、面倒くさがらずにやることをおすすめします。
取得までにかかる料金
ボクシングのプロライセンスを取得するまでには、実はそれなりのお金がかかります。
ザっと軽く見積もっても以下の通りです。
これと合わせて、上記で挙げた練習道具の購入と、ジムの月会費など全て含めると、10万円以上はかかります。
「そんなにかかるのか・・・」と思われる人もいるかもしれませんが、ボクシングに限らずプロになるためにはお金はかかるものです。
これをもったいないと思うのであれば、諦めた方がいいでしょう。
取得の成否を分けるポイント
ここからは、プロライセンス取得の成功・失敗を左右するポイントを、筆者の経験から解説します。
①真面目に練習を続けられるか
当たり前のことですが、練習に真面目に取り組むのは大前提となります。
会長やトレーナーの指導に従わず我流でやり続けたり、練習に集中せずにジムの仲間と喋ってばかりでは、プロテスト自体受験させてもらえないでしょう。
また、仕事が忙しいという言い訳や、疲れてしまい練習に行かずサボるのもダメです。
ボクサーというと不真面目なヤンキーが多いとイメージされがちですが、そんな人はボクシングを始めてもすぐに辞めてしまいます。
プロテスト受験時に周囲の受験生を見ると分かりますが、大半はどこにでもいるような普通の人で、スパーリング前後もしっかり挨拶してくれます。
地道に継続できる才能がないと、プロライセンス取得は不可能です。
②モチベーションを維持できるか
スポーツにおいて、モチベーション問題は最大の懸念事項と言えます。
どれだけ真面目でボクシングが好きでも、毎日モチベーションを高く保って練習に臨むのは、非常に難しいもの。
筆者もモチベーションが上がらず、練習に行くのが辛くて辞めたくなったことが何度もありました。
プロライセンス取得のための練習となると、楽しく和気あいあいというだけでは出来ないので、心身へのストレスはそれなりにかかります。
それもあって、モチベーションの維持は想像以上に厳しく、自分をたびたび苦しめるものになることを覚悟しておいてください。
③痛みと恐怖に打ち勝てるか
練習の1つであるスパーリングは、相手の本気のパンチを喰らうので当然痛いです。
人間の本能として、その痛みに恐怖するのは当然の反応であり、悪いことではありません。
ただ、プロテスト受験までに何度もスパーリングをすることになるので、これに打ち勝てないと取得は叶いません。
筆者はスパーリングを本格的に開始するようになってから1か月ほどは、毎回スパーリング前はドキドキして逃げたくなっていました。
エクササイズ目的であれば無理する必要は全くなくても、プロライセンス取得目的となるとそうもいかないのです。
これに耐えうるメンタルを持ち合わせているかは、重要なポイントと言えるでしょう。
④ボコボコにされても立ち直れるか
コミッション加盟のジムであれば、必ず現役のプロ選手が在籍しています。
プロライセンス取得のための練習となれば、こうしたプロ選手とスパーリングする機会もあります。
彼等は試合も経験していますし、こちらとの実力差は明確なので、ボコボコにされます。
人によってはこれがトラウマとなり、辞めてしまうケースも珍しくありません。
ただ、これはプロボクサーになるにあたって、誰もが1度は通る道だと思います。
これを乗り越えられなければ、諦めるしかありません。
⑤仕事を柔軟に休めるか
プロテストは平日に開催されます。
しかも、3週間ほど前にいきなり試験日の通知が来るので、その日を休みにするスケジュール調整が必須です。
それ以前に、週に5~6日の練習をこなすには、仕事との兼ね合いが必要です。
したがって、変な話ですがプロライセンス取得までは仕事よりボクシングを優先できる状態でないと、かなり厳しいです。
人によっては、プロボクサーになるために転職して、ジムの近くに引っ越すことも。
筆者はそこまでの気概は出せなかったので何も言えませんが、それくらいの覚悟も問われるということは覚えておいた方がいいでしょう。
⑥理不尽に対して大人の対応ができるか
ジムにいる会長もトレーナーも人間ですから、時には理不尽なことをされる場合もあります。
しかしここで逆上すれば、プロライセンス取得の道は閉ざされてしまいます。
既にお話した通り、プロライセンス取得のための練習は、永遠に続くわけではありません。
それまではこちらが大人の対応で上手くかわして、何とかやり過ごしましょう。
ライセンスさえ取得できれば、たとえジムを辞めても『元プロボクサー』とは名乗れますしね(笑)。
取得できた時の達成感は格別
以上が、筆者がプロライセンス取得のために必要だと感じ、実践してきた全てです。
苦しい時も辛い時も多く、諦めてしまいそうになることも、何度もあると思います。
ですが、それらを全て乗り越えてプロライセンスを取得できた時の達成感は、何物にも代えがたいです。
自身の成功体験となりますし、今後の人生において非常に大きな良い影響を与えてくれることは確実です。
プロテストを受験できるのは、満34歳までと決められているので、いつまでも挑戦できるものではありません。
思い立ったが吉日。頑張りたいと思うのであれば、勇気を持ってすぐに始めましょう。
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