格闘技が好きな人であれば必ず「体重差」という言葉を耳にします。
よく使われるのはプロの試合で、「両者の体重差は○○㎏あり~」と実況のアナウンサーが説明している場面です。
格闘技は基本的に『階級制』を採用していて、試合では同体重の選手同士が闘います。
格闘技をやっていない人からすると、「体重が違うと何か変わるの?」と疑問に思うことでしょう。
この記事では、
について、可能な限り分かりやすく説明します。
これを書いている僕は
・格闘技歴10年以上
・アマチュア選手としてキックボクシングなどの試合に出場経験あり
・ボクシングのプロライセンス取得を目指して現役で練習中
の身であり、体重差のある相手との練習経験もたくさんあるので、参考になれば幸いです。
体重が重い方が有利
まず体重差がある影響を簡潔に言うと、『体重が重い方が有利で、軽い方が不利』です。
例えばパンチやキックなどの打撃では、体重が重い方が威力は高いです。
また、組技や寝技でも体重が重ければその分崩したり組み伏せるのは大変で、技をかけてもパワーで強引に解かれる可能性が高くなります。
もちろんテクニックや戦略の組み立て方でカバーできる部分はありますが、基本的に体重差はあればあるほど重い方が有利なのは事実。
元プロボクシング3階級制覇の長谷川穂積さんも、動画の中で『階級の壁』についてお話していることから、体重がどのような影響を与えるかはよくお分かりいただけるかと思います。
体重差があっても勝つことは可能
とはいえ、「じゃあいくら実力があっても、所詮体重が軽い選手は重い選手には勝てないのか…」かというと、そんなこともありません。
例えば、2004年の『k-1 World GP(グランプリ)』にてガオグライ・ゲーンノラシンとマイティ・モーという選手が闘いました。
ガオグライの当時の体格は身長が180㎝で体重が78㎏だったのに対し、モーは身長が185㎝で体重が127㎏。
両者の体重差は49㎏と、圧倒的にモーが有利と思われていました。
しかし、結果はガオグライがジャンピングミドルキックの一撃をモーの顔面に叩き込みK.O.勝利!
僕がこれまで見てきたキックボクシングの試合の中で、最も衝撃を受けた試合です。
この他にも、かつて存在した興業の『Dream』でのスーパーハルクトーナメントという無差別階級試合では、ボブ・サップやチェ・ホンマンといったまさに巨人と呼べる選手を、体重70㎏ほどのミノワマン選手が足関節技で勝利しています。
「柔よく剛を制す」ではありませんが、体重差のハンデをものともせず闘い、そして勝つという姿に、観客は興奮していました。
だから体重差で全てが決まるというわけではないですが、試合映像を観ると分かるのですが、真っ正面から打ち合ったりはないので、やはり工夫は必須なんだということは間違いありません。
体重差の影響を感じた体験談
ここからは、僕自身が実際に体験した体重差の影響を感じたエピソードをお話します。
キックボクシングジムに通っていた時、身長185㎝で体重が75㎏ほどあるアマチュア選手とマススパーリングする機会がありました。
対して僕は身長170㎝そこそこで体重は60㎏という体格。
リーチが違うのでその点の苦戦はもちろんありましたが、それ以上に打撃の重さが違いすぎます。
マススパーリングなので全力ではないにせよ、ガードしても吹き飛びダメージが蓄積していきます。
何とかかわしつつ反撃を試みますが、前蹴りや膝蹴りを多用されカウンターが飛んでくるためうかつに入り込むこともできず、完封されてしまいました。
また、寝技で体重差30㎏ほどある男性とスパーリングをした時がありました。
三角絞めという関節技を僕が仕掛けほぼ入っているはずなのに、両腕のパワーで強引に足を開かれまつ破られ、そのまま上から潰されたのです。
自分より30㎏重い人間にのしかかられるとそれだけで苦しく、何とか逃れようと奮闘したのですがアームロックという技で一本を取られてしまいました。
もちろん上記のお二人は僕より実力もあって同体重であっても負けていることは変わりませんが、そこに体重差が加わるとなす術がなくなります。
改めて体重差の影響の大きさを痛感しました。
まとめ
本記事の要点をおさらいします。
- 基本的に体重が重い方が有利
- 体重差があっても勝つことは可能だが、真正面から闘うことは難しくかなりの工夫が必要となる
- だからこそ格闘技には階級制が設けられている
プロの試合は両者が合意の上で成り立つので、成立した時点で体重差があることを言い訳にはできません。
しかし、そうでなければ体重差があると軽い方の人にかなり負担がかかるので、練習の際はいつも以上に注意が必要となります。
改めて言いますが、体重差というのは皆さんが想像している以上に残酷な影響を及ぼします。
そのことを体感するには実際に練習してみるしかありませんが、やる機会のない人も「そういうものなんだ」という認識は持っていてもらえるといざという時に役立つかもしれません。
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